自転車事故で上顎骨折。50代現役医師の体験談。

骨折の話

自転車事故で上顎骨折。50代現役医師の体験談。

わたしは現在59歳で、医師をしています。初めての骨折は52歳のときで、そのときも職業は医師でした。あの出来事は今でも鮮明に覚えています。

深夜、自転車で帰宅中にその事故は起こりました。深夜だったということもあり、結構飛ばして走行していました。信号が青だったので、そのまま横断歩道を走ればよかったのですが、横断歩道の横の路肩部分も横断歩道同様に道路と同じ高さに見えてしまい、ちょっとだけ近道するつもりでその路肩に突っ込んだのです。自転車は折りたたみ式タイプのもので、安定感に書けます。

ガクンという突然の衝撃とともにわたしの身体は前に放り出され、上唇から路面に着地しました。そうなのです。わたしが道路と同じ高さとだと思っていた路肩部分は段になっていたのです。上唇から着地したわたしには、何が起きたのか一瞬判断が付きませんでした。周囲は暗く、誰もいません。恐る恐る上唇を触ってみると、少しだけ出血していました。そして、舌先で、これも恐る恐る歯を触ってみました。やはり折れてはいないようです。しかし、上唇を中心として、顔の下半分がジンジンと痺れており、感覚がありません。自転車はタイヤがひん曲がり、乗って帰れそうもありません。自転車を乗り捨てて、深夜、トボトボと暗い道を歩いて帰りました。

その日はそのまま布団に入り、数時間の浅い睡眠を取り、翌日鏡で顔を確認しました。顔の出血は思った程ではありません。歯も折れたり、欠けたりはしてませんでした。しかし、上顎の部分が猛烈に痛く、舌先で上顎や前歯を圧迫すると、飛び上がるほどの痛みでした。

ちょうど土曜日だったので、土曜日も開いている歯科を受診。そこでエピソードと症状を言ってから、写真を数枚撮られました。何と結果は異常なしの診断。こんなに痛いのに異常なしは無いだろうとはおもいつつも、土日は家で我慢しているしかありませんでした。食事はまったく摂取できず。噛むと激痛が上顎に走るのです。何とか、飲み物だけ摂取してました。

月曜日に他の歯科を受診。やはり写真を何枚か撮られ、異常なしの診断。それにもかかわらず、虫歯でも欠けてもいない前歯の治療をするといわれ、納得出来ないままに治療をされました。その後1週間の間に数回歯科で治療を受けるも、激痛は改善しませんでした。
そのことを病院の放射線技師に話すと、CTを撮ってくれることになり撮影。出来上がった写真をみると、な、なんと上顎に骨折線が・・・。転倒した際に上顎骨折していたことが判明したのです。

早速その写真を治療中の歯科に持って行きみてもらいましたが、まったく無反応。このまま歯の治療をしたって、全く良くなるわけありません。しかし、その歯科医はもくもくと治療の続きを行い、結局前歯2本は差し歯となってしまいました。まったく余計な治療を受けた事になってしまいました。

1ヶ月は痛みのため、固形物は摂取できませんでした。うどんがあんなに硬い食べ物だとは思いませんでした。ヨーグルト、ゼリー、とろろ芋、そんなもので空腹を満たしました。ただ、体重はどんどん落ちていき、がん患者さんと間違えられたりもしました。
骨折があれ程痛いものだというのは思いもしませんでした。わたしが医師で、しかも放射線科医。放射線技師に気軽にCT検査を依頼できたので、本当の病名(上顎骨骨折)が分かりましたが、一般の方々はおそらくCT検査までは受けなかったと思います。

理由もわからないまま治療を受け、時間が経って骨が癒着して症状が改善。歯科治療が効果があったのではなく、自然治癒で治ったとは考えもしなかったに違いありません。元を正せば不安定な自転車でのスピード出し過ぎと、確認ミスが原因です。しかし、クリニックや病院は信頼の置けるところを受診すべきであるというのが、この転倒骨折からの教訓でした。